数寄屋(すきや)は小さいながら鋸歯が特徴的な濃い緑の葉を持つ木に淡桃色の花をつけます。 1880年頃には栽培されていた記録が残る比較的古い、江戸椿の代表的な品種です。 小さいながらも桃色の花を多くつけるので明るい印象があり庭木に向きます。(写真 都立大島公園椿園)
三河数寄屋と数寄屋はよく似ているが品種として確立したのは数寄屋が圧倒的に早く、三河数寄屋が品種として認められたのは1970年代。 種として近いというわけではなく、たまたま三河地方の椿で数寄屋に似る花をつける木があり、それに三河数寄屋と命名したらしいです。 ともに管理者好みの品種です。
椿の数寄屋の名前は茶室の「数寄屋」からきていることは恐らく間違いないと思われます。そもそも「数寄」は「好き」からきており、茶を好く好き者を書き下した際に敢えて「数寄」と書き換えたものでしょう。なんとなく「普通とは異なる」を表現したい数寄者の心象が垣間見えるようです。
数寄屋の発祥は安土桃山時代のようですが江戸時代には数寄屋の言葉は茶室を表すほどに広まっていたようです。当時の数寄屋は華美を嫌い在野の材料や技術を在り合わせて成立したと考えられていますが、現代では最高級の技術を用いて侘寂を表現するものになっています。
茶の趣味そのものが一般的なものではなく、近年では「お高い」ものになってしまっていることから数寄屋のあり様も変わってきたことでしょう。
一方、椿の「数寄屋」は小ぶりな端正な花を多くつける可憐なツバキで、江戸時代にも好まれたことはよく理解できます。侘寂ではなく可憐という風情ですが、侘寂の数寄屋の中に飾るにはちょうど良い具合で茶人に愛されたのも想像されます。よく考えれば茶もCamelliaの一種で椿が茶人に愛されるのはむしろ必然か。
数寄屋椿は比較的入手も簡単で木も強く庭木に向きます。花の色も明るい淡い白桃色で特徴的です。
同じ数寄屋の名前を持つ三河数寄屋は異なる種類ですが名前の通り確かに花は似ています。但し数寄屋に比べるとやや桃色が濃い印象があります。もし入手できれば三河数寄屋も数寄屋と同じく庭木にお勧めの種類です。
共に比較的強いので育てるのは難しくありませんが、冬場の寒さには強くはありません。霜が降りるような場合は根元に少し藁を敷くなど保温してやると春先により美しい花を咲かせてくれることでしょう。
なおこの写真を撮影しているのは都立大島公園椿園ですので霜の心配はまずありませんから、この場所は保温していませんが、同じ津梅園内でも三河数寄屋の植えられた場所は軽く藁を敷いて保温しています。参考にしてください。