乙女山茶花 - これはサザンカ

代表的なサザンカ 乙女山茶花 - やわらかい色合いと美しい造形が好ましい花です。

椿と山茶花の違い

椿と山茶花の違い

椿は学名でCameria japonica、サザンカはCameria sasanquaです。サザンカの学名はササンクアと読めますが、命名したのは1775年から1年間、日本に滞在したツンベルク(ツュンベリー)というスウェーデン出身の医者だそうです。植物分類学で有名なリンネの弟子で、リンネの方はツバキを命名しました。但しリンネは来日したわけではなく別人の文献に描かれた椿を資料に命名しました。

完全な余談ですが、同じ時期、アボガドロ定数で知られるアメデオ・アボガドロが誕生し、日本では平賀源内がエレキテルを再現するなど現在の学問の基礎が世界中で築かれつつありました。リンネの分類学もその一つと言えるでしょう。

ツバキ、サザンカ共にツツジ目ツバキ科ツバキ属に属しよく似た特徴を持っています。見分け方は

・ツバキは花が丸ごと落ちるがサザンカは花弁が散る
・ツバキは花弁の根元は完全には開かないが、サザンカは完全に開く
・ツバキのおしべは根元でくっついているが、サザンカは根元から分かれている
・ツバキの実や葉柄には毛がないが、サザンカにはある

などの違いがあるとされています。とはいえ、数多い園芸品種の中には花弁の散るツバキもありますし、花弁が付け根からかなり開く品種もあります。極めつけは寒椿(かんつばき)でツバキとサザンカの交雑種という説もあります。なお道路の植え込みなどで初冬から咲いている中輪の椿は寒椿であることが多いです。特徴は花付きが良く、明るい紅色の中輪花が咲きます。寒椿はどちらかといえば花が落ちるのではなく散る個体が多いようです。

ツバキ、サザンカ共に花の開き方などは個体差が大きいため、パッと見ただけでどちらかを判断するのは難しいです。あまり種類に拘ることなく鑑賞するのが良いのではないでしょうか。傾向で言うとサザンカの方が大きく開く華やかな花の割合が多いので華やかなのが好きな方には椿よりもお勧めです。

「くもりガラスを 手で拭いて♪」ではじまる昭和の歌謡曲の影響でサザンカの方が寒い地域に多いイメージがありますが、北限地は共に青森県辺りでどちらも寒さには強くありません。

紅漆 - これはツバキ

紅漆 - 椿(侘助)の代表的な品種。サザンカには侘助のような小輪のラッパ咲き・筒咲・抱え咲の品種は少ないのでこの写真のような花はまず椿です。


緋の司 - これもサザンカ

緋の司 - サザンカの特徴が良く分かる品種です。非常に平開するその名の通り印象的な緋色の花を咲かせます。花が落ちるのではなく花弁が散る典型的なサザンカです。

サザンカと日本文化

サザンカの名前は中国語で椿を意味する「山茶花」の読み「さんさか」が音韻交代してサザンカになったものとの説が有力です。ツバキが万葉集でも歌われているのに対してサザンカは歌われていません。この時代には特にツバキとサザンカを区別せず「つばき」と呼んでいた可能性もあります。江戸時代になるとぽつぽつと短歌や俳句に歌われ始め、現代では俳句に頻繁に読まれています。

とはいえ現代では童謡「たきび」や歌謡曲などの方が有名です。 ちなみにサザンカの歌の印象が強いですが、「たきび」の1番の出だしは「かきねのかきねの…」で「さざんかさざんか…」は2番の出だしです。

ツバキと同様に果実はサザンカ油の原料として利用されます。ツバキ油との比較は成分的にはあまり意味がなくほとんど同じで、 それぞれ上質なものは上質です。産業利用はツバキの方が主ですが希少ではない程度にサザンカ油も流通しています。


寒椿 - これは交雑種?

寒椿 - 椿とサザンカの両方の特徴を持ちます。三省堂のweb辞書で花は「やや小さく」とありますが、個体差があるにしても藪椿と比べても小さいことはありません。「寒椿」という品種ですが、歌や詩、劇などで寒椿というと「寒い時期に咲く椿」のことです。これらを見て「寒椿じゃない!」などというのは野暮というものでしょう。

なお植え込みなどで使われているのはこの寒椿が多いです。ヤブツバキなどに比べると花付きが良い上に環境の変化や寒さ、乾燥、日光などにも強いため手入れが簡単な特徴を活かしています。


四君子 - これはツバキ

四君子 - 椿です。椿は平開咲きしないとされていますが、種類によってそんなことはないという一例。