侘助は学名Camellia wabisukeでいわゆる椿のCamellia japonicaとは区別される場合もあります。細かい定義では太郎冠者または数寄屋から取り上げられた種のうち、雄蕊の花粉がないかごく少なく、果実(種)に毛があるものとする説もあります。上の写真は太郎冠者。
但しこの分類には少し無理があり、講武侘助や陸奥侘び芯、紺侘助など一般的に侘助扱いされている種はヤブツバキからの選抜なので侘助ではないということになってしまいます。ヤブツバキからの選抜種はワビシンとして区別する考え方もあるようですが少々無理があるように思われます。
管理人の完全な独断ですが、出自や色、果実の形や毛の付き方その他に関わらず
侘助の分類を語るのはちょっと野暮のすることで、以下ではやっぱりその魅力を紹介したいと思います。
紺侘助 - 侘助の代表的な品種。ヤブツバキからの選抜種なのでワビシンに分類されることも…。葉の濃緑と花の深い紅色の対比が激乙。また小ぶりな花が愛らしく庭木によく向きます。侘助全体の特徴ですが落ち椿も絵になります。
白侘助。白い椿はやや珍しく、その中でも侘助に分類される品種。個々の花は確かに侘助ならではの可憐さですが、まとまって咲いている様子はまた印象が少し異なります。
侘助という言葉は安土桃山時代、茶道隆盛の時期に生まれたものと察せられますがはっきりしません。一般的には豊臣秀吉の朝鮮出兵時に侘助という人が持った帰ってきたとか茶人笠原侘助に因んでとされています。これは私の想像ですが「侘びた数寄屋向きの椿」が「侘び数寄椿」になり「侘助」になったものかと。
実際、古今を問わず茶室の花として椿は多く使われています。茶碗のモチーフとしても椿ではなく敢えて「侘助」としているものもあり茶人の拘りが垣間見えます。
一方、当たり前ですが安土桃山時代以前の古典文学には侘助は出てきません。椿とされている中には今でいう侘助も含まれるでしょうが、侘助という種類の概念がなかったのですから仕方がありません。近代になると俳句の季語として非常に多くの句に読み込まれました。「侘助や障子の内の話し声 高浜虚子」は特に有名。
都はるみさんの散華という歌の冒頭「桜、れんぎょう、…、侘助、寒牡丹」(以上引用)と日本の四季を花で表し、冬の代表として侘助を挙げています。椿ではなく侘助としたのは音の数の都合でしょうが、椿よりも歌の雰囲気にはよく合っていると思います。
小豆黒 - 非常に小型で黒紅色の花を付ける管理人お気に入り品種。但し入手が難しい上に少し弱く庭木には無理かも。
侘助はやや狭い日本の庭にちょうど良い大きさの花、入手しやすいい苗、種類によりますが比較的強い木など庭木に向いた特徴を兼ね備えています。(太郎冠者はとても強い。白侘助は少し弱い。)
侘助は落ち椿の姿も美しいことは前述しましたが、これにはもう一つ都合の良い点があります。…散り性の寒椿などに比べると片付けやすいです。
数寄屋 - 侘助の原種ともいわれる種類です。比較的入手しやすく、木も強いので勿論庭木に向きます。三河数寄屋は数寄屋とは別々に種類として取り上げられた種類ですが、数寄屋より色が濃くこれも庭木向きです。