椿はCamellia japonicaの原種であるヤブツバキの印象が強いため濃紅~紅色~淡紅色の花が一般的にイメージされます。
一方で白い椿の種類が「少ない」かというと決してそうではなく、管理人が撮影したことのある種類だけでも数十種類に上ります。代表的な加茂本阿弥、白玉、白獅子、初雁、臘月などは既にこのサイトの個別種ページに掲載しています。
白い椿は茶会でも好まれるとのことを仄聞していましたし、2021年3月の伊東市小室山公園椿園の取材で白い椿の魅力を再認識しましたので、この時の取材写真を中心に白い椿の魅力を紹介します。
その名前の通り、ヤブツバキを白くしたような品種。花は白玉に似ていますがシロヤブぼ方がやや面長な印象です。端正な白い花弁と黄色い蕊の組み合わせが非常に魅力的な白い椿です。
キホウデン 貴宝殿は八重の大輪が美しい白い椿です。咲き始めは極淡く桃色がかっていますが、花が開くにつれて真っ白に近づく「移り白」と呼ばれる特徴があります。このツバキは1970年代に埼玉県鳩ケ谷で自然に咲いていたものを取り上げて品種化したものだそうです。
ササメユキ 細雪と名がつく椿は手元の資料で極小輪の花と小輪の花の2種類あります。この写真は小輪のササメユキ。一見シロヤブに似ていますがラッパ咲きの花弁の先が細かく縮れて外側に反ります。そう言えば谷崎潤一郎の作品に細雪がありますが、この椿のササメユキ 細雪が品種化されたのは1970年代以降のようで勿論作品とは無関係です。ただ、楚々とした風情は谷崎の細雪で描かれた4姉妹に通じるかも。
ツキノシズク 月の雫は中大輪で咲き始めは宝珠咲きから始まり、花が進むにつれて八重の抱え咲になります。手元資料には記載がありませんが、椿園の木に「月の雫」のタグがしっかりついていましたので、比較的新しい品種かもしれません。その名の通り清冽な印象が強い花です。
ヒトマロ 人麿は中大輪で長い花弁が筒咲に咲く特徴的な白い椿です。手元資料では一重咲きとなっていますが写真の個体は八重に近くなっています。蕊がまっすぐなまま強く平開する花弁はユリの様にも見えます。古くから愛知県にあったそうですが命名されたのは1970年代とのこと。住吉神社には柿本人丸を祀った人丸社があるそうですが、人麿の名前はそれと関係あるのか?
ハレスガタ 晴姿は中輪で縮れの入った花弁を八重に咲かせる白い椿です。花弁は前出のシロヤブのようにカッチリとした印象ではなく、その先の縮れも相まって軽いスカートの裾が風に吹かれている趣が好ましいです。あるいはこの様子をウェディングドレスの裾に見立てた命名と考えるのは管理人の憶測か?手元の資料には晴姿(中部)、晴姿(新潟)の2種類が掲載されていますが、このどちらとも異なった種類のようです。