光源氏(ひかるげんじ) - 花
光源氏(ひかるげんじ)の特徴

ツバキの中には源氏物語の人物や事物にあやかった命名は時々あります。管理者はこれらを勝手にまとめて「源氏物」と呼んでいますが、その代表。

1800年代後半には品種として取り上げられたと考えられる、その名の通り中大輪で淡い紅色に白い覆輪が非常に美しい花を付ける江戸椿の代表的な品種。立性の木に華やかな花がついている姿が好ましい品種です。椿(Camellia japonica)ですがやや散り性です。

開花時期が椿としては遅めで2月中旬から4月頃までです。ウメやサクラが咲き始める時期ですが、美しさの点でこれらの花に決して後れを取ることはないでしょう。苗の入手も比較的容易で人気のある品種です。華やかさの割には育てやすい品種でまた立性なので庭木にしても纏めやすいと思います。

光源氏(ひかるげんじ)管理者コメント

「光源氏」命名した人はかなりこのツバキに自信を持っていたことは間違いないでしょう。日本文学の古典史上最も有名で最も華やかな人物にあやかっているのですから。確かに自信を持ってよいだけの美しい花を付ける品種です。

ところで管理者が若かりし頃、「光GENJI」という大勢の男性で構成されたアイドルグループがいました。勿論古典要素のかけらもなく、ツバキも関係なく、アイドルに興味のなかった管理者は「なんだこれ?」と戸惑ったものです。

ツバキの光源氏は薄紅に白い覆輪かすかに白い絞りという造形の繊細さが原因かもしれませんが、一つの木に趣の違う花(変わり枝)が多い印象があります。絞りが無くなったり、覆輪が薄くなってやや色が濃くなったり。もし光GENJIがこのような多様な個性を見せるという意味で命名されていたとしたら…その可能性はなさそうですね。

光源氏(ひかるげんじ) - 花
光源氏を庭木に

光源氏は苗の入手が簡単ですが太郎冠者等の小中輪の椿に比べるとやや手がかかります。花が大きい分肥料をマメに施用する必要がありますし、蕾が多く付いた時は摘雷(つきすぎた蕾の先を切って咲かせる花を充実させる)が必要です。摘雷はしなくてもそれぞれ花が咲いていきますが、完全花が減りますしあまり多くの花を咲かせると翌年の花が少なるなる原因にもなります。

比較的立性の木は庭木に向きますが椿なので成長が遅いのは仕方がありません。数年あるいは10年以上世話してやるつもりで庭に植えてやれば毎年美しい花を咲かせながら少しずつ育っていくはずです。

鉢植えにしても問題なく育てることが出来ます。むしろ花が付き始めた時期に風や鳥をよけて移動できるという意味では鉢植えの方が向いているかもしれません。椿の花の時期はメジロが比較的椿を好んで寄ってきますが…花が傷みます。鉢植えならこの問題は避けられます。

やや手のかかる椿ですが、「家には光源氏が咲いている」と思うだけで少し心が浮き立ちませんか?

光源氏(ひかるげんじ) - 花
落ち椿も美しい光源氏? (上の写真はネームプレートは光源氏でしたが 源氏絞りかも)

源氏物語の本編終盤に至って光源氏は明らかに精彩を欠くことが多くなります。望まれて仕方なくそうなったとはいえ形式上の正妻である女三の宮を柏木に寝取られ、女の三宮には出家して逃げられます。紫の上の病に当たって出家を望まれると狼狽えていますし、その死に臨んでは呆然と佇んでいるだけの印象です。

紫の上がなくなってからは女君を訪ねては昔話をする冴えない姿を描写されています。そして自らの落飾の準備を進める場面を描き、その後の雲隠れがその死を示唆しながら物語は終わります。もしかすると作者である紫式部自身が宮中で「この人をしてこうか…」と思わせることが実際にあったのかもしれません。

一方、椿の光源氏は落ち椿が美しい。この点は物語の光源氏に椿の光源氏が勝っている点でしょう。