太郎冠者(たろうかじゃ) - 花
太郎冠者(たろうかじゃ)の特徴

数寄屋加茂本阿弥などと並んで古典椿の代表的な品種。江戸時代から命名されており別名は有楽。薄い緑の葉の中にぽつぽつと中庸の大きさの桃色の花をつける。花弁にはふはなく花弁元から開き、花弁先も開き満開に向けてやや反る。蕊はやや小さく色も淡い。木はやや叢生(写真 都立大島公園椿園)

寿侘助はこの太郎冠者の木で変異したものを品種として取り上げたものです。太郎冠者の木から寿侘助の組み合わせは如何にもめでたい感じがします。

太郎冠者は侘助(ワビスケ)の原種とされることもあります。とはいえ数寄屋寿侘助昭和桃色侘助は太郎冠者が原種ですが、講武侘助紺侘助藪椿(ヤブツバキ)から取り上げられていますからご注意?を。

太郎冠者(たろうかじゃ)管理者コメント

椿の中では華やかな花色と比較的早い時期に咲くのが特徴です。 咲き始めは花付きがあまり密ではなく、淡い緑色の葉をややまばらにもつ幹枝に華やかな色の花が付くのが好ましいです。 一方で手入れが行き届いた木では満開の時期になると多くの花を密につけるので見ごたえがあり、庭木でも人気の品種です。 その名は太郎冠者と男子のようですが、印象はあくまでも柔らかです。

元が同じ木でも寿侘助の方が花弁が短めでやや幅が狭く、開いても先が大きく反りません。 同じ木で両方の花が咲いていれば、明らかに「違うのがついているなあ」と気づくでしょう。

太郎冠者(たろうかじゃ) - 花
太郎冠者とは

冠者は元服した成人のことを言い、太郎はその筆頭。つまり大名家などの家臣、召使などのうち筆頭の者のことですが、現在では多くの場合、狂言の役柄の一つの意味で使われます。狂言において主役であるシテとして登場することが多く、狂言においては主人公的な役です。

もっとも主人公とは言えその性格は演目によって異なりますが概ね主人や大名などを頓智や機転でやりこめ、時にはやりこめられる明るく、笑いを誘う役柄です。演目によっては次郎冠者、三郎冠者も登場し舞台を盛り上げます。

翻って椿の太郎冠者は1739年には「本草花蒔絵」に取り上げられていて、古典椿の代表的な品種。侘助系では比較的花が大きくまた明るいその色は確かに狂言の太郎冠者に通じる性格も感じさせます。別名を有楽ともいい、古い品種だけに別名にも味があります。

代表的な品種で入手しやすく育てやすい点は庭木に向きます。筆者としては比較的個体差が大きい印象で伊豆大島椿園の個体は中小輪でやや花付きまばら、小石川植物園の個体は中輪で花付きが非常に密なものを見たことがあります。おそらく時期や気候、場所、土壌などで異なるのですが、様々な表情を見せる点も「太郎冠者」の名前にふさわしい感じがします。

太郎冠者(たろうかじゃ) - 花
太郎冠者椿を庭木に
太郎冠者(たろうかじゃ) - 花

太郎冠者は苗の入手が簡単で、木も強く庭木に向きます。個体差がありますが数寄屋加茂本阿弥に比べるとやや叢生(横に広がって育つ)する株が多いように思われます。

花の咲き始めはあまり多く一度には咲きませんが、手入れが良い個体は盛りの時期になると上の写真の様に数多くの花を一度につけます。一つ一つの花は小さいとはいえ淡い桃色の花が多数咲く様は見ごたえがあります。

また太郎冠者は関東名で関西では有楽と呼ばれるのは前述の通りで、庭木としても愛されてきました。この椿は侘助品種の基になっているという説もあり、庭木に植えて結実させて種を取り植えると少し趣の異なる花をつけるかもしれません。

椿の実(種)は乾燥させると発芽率が落ちますので木についているうちに採集し水に1~2日つけます。その後は水はけのよい土にまき軽く土をかけてマメに潅水します。発芽率はあまり良くないので芽が出なくてもめげずに次のチャンスを待ちましょう。

太郎冠者(たろうかじゃ) - 全木