伏見・桃山あたりに古木が多く、周辺の出生が想像されている古くからの種です。 クチクラのあるやや淡い緑の葉の中にポツリと桃白色の大ぶりな花をつける。 花弁にはふはなく花弁元から開き、花弁先は大きくは開き反りは少ない。 蕊は大ぶりでの黄色も濃い。花弁の桃白色に対して蕊の黄色が大きく目立つ。(写真 都立大島公園椿園)
曙というと、大相撲にその名の横綱がいました。ハワイ州出身で力士らしからぬ8頭身の姿と手足の長さが特徴的な魁偉な風貌を思い出します。椿の曙は勿論魁偉などという形容詞は似合いませんが、ツバキらしからぬ華やかな咲きぶりの花弁と黄色の鮮やかな蕊は印象的です。「らしからぬ」が双方の曙に共通の印象です。
春は曙。清少納言は代表作の枕草子の冒頭でこう言い切りました。「やうやう白くなりゆく山際(やまぎわ)、すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」と続けてその良さを訴えます。
一方、椿の曙は淡い桃色~桃色の花弁に黄色の蕊が映える美しい花です。花弁の見方によっては淡い桃色がグラデーションに見える辺りは「ようよう白くなりゆく」に通じるところがあります。
残念ながら筆者は茶を嗜みませんが、正月の茶席ではこの椿を使うのが定番なのだとか。確かに春は曙の連想から正月と曙の名の取り合わせはよく合っていますし、花も丁度この時期が開花期の盛期に当たります。
木が強く、立性(木が広がらず上に育つ)ので庭木に向きます。人気品種なので苗も比較的入手しやすくさほど高価なものではないので庭木にあるいは鉢植えで手元で鑑賞するのもおすすめです。